取引事例比較法を考える Vol.3
2020.10.23
VOL.03 誤差について考える
公共測量には公共測量作業規定があり、こと細かく作業内容が決められており、測量精度によって誤差の取り扱いにも差を設け、その処理の方法について規定している。
ところで、鑑定評価には誤差の入り込む余地はないのであろうか。
鑑定評価作業は判決のように定性的な判断の積み重ねというより、どちらかというと定量的作業の結果導き出された結果に対して定性的観点から判断を加える形となっている。
したがって、評価作業の途中は数字の処理が大半である。
道路条件や接近条件では幅員・距離に測定を伴う作業があり、必然的に測定誤差が入ることになる。
環境条件については、定性的には理解できても、定量的には何も解らないから、誤差概念が成立するかどうか解らない。
また、計算過程では有効数字の取り扱いにより結果が異なる。
評価作業の数字を処理する過程で誤差が入り込む危険性は高い。
にもかかわらず、我々がこれらの比準作業なり収益計算上、誤差について神経質になっていないのは、結果に合わせて作業しいるからに他ならないのではないか。
評価作業のプロセスは結果を形式的に補強しているだけで、化学実験のように誰も結果についての追試はできない。
数学的に考えると、評価作業は矛盾に満ち満ちている。
結果を予測して結論を出している以上、誤差の問題も仮説の実証という作業も意味を持たない。
故に、誰も問題にしない。
鑑定ムラの論理かはたまた独善か。
鑑定に仮説の実証は必要か、誤差論は必要か。
乏しい知識ではどうにもならない。
どうにもならないが鑑定をしなければメシが食えない。
一体私は何なのか?眠れぬ日々が続きそうだ。
公共測量には公共測量作業規定があり、こと細かく作業内容が決められており、測量精度によって誤差の取り扱いにも差を設け、その処理の方法について規定している。
ところで、鑑定評価には誤差の入り込む余地はないのであろうか。
鑑定評価作業は判決のように定性的な判断の積み重ねというより、どちらかというと定量的作業の結果導き出された結果に対して定性的観点から判断を加える形となっている。
したがって、評価作業の途中は数字の処理が大半である。
道路条件や接近条件では幅員・距離に測定を伴う作業があり、必然的に測定誤差が入ることになる。
環境条件については、定性的には理解できても、定量的には何も解らないから、誤差概念が成立するかどうか解らない。
また、計算過程では有効数字の取り扱いにより結果が異なる。
評価作業の数字を処理する過程で誤差が入り込む危険性は高い。
にもかかわらず、我々がこれらの比準作業なり収益計算上、誤差について神経質になっていないのは、結果に合わせて作業しいるからに他ならないのではないか。
評価作業のプロセスは結果を形式的に補強しているだけで、化学実験のように誰も結果についての追試はできない。
数学的に考えると、評価作業は矛盾に満ち満ちている。
結果を予測して結論を出している以上、誤差の問題も仮説の実証という作業も意味を持たない。
故に、誰も問題にしない。
鑑定ムラの論理かはたまた独善か。
鑑定に仮説の実証は必要か、誤差論は必要か。
乏しい知識ではどうにもならない。
どうにもならないが鑑定をしなければメシが食えない。
一体私は何なのか?眠れぬ日々が続きそうだ。
取引事例比較法を考える Vol.2
2020.10.15
VOL.02 地域の変化がないのに若干の時間が経過するだけで格差率は変化する
ある街の地価公示を例に取り異時点間の格差率の変化を見ると次のとおりである。
ちなみに、5-1・5-4の地域の状況は、H8とH12を比較しても特に変化が見られない。
少なくとも、街路条件・交通接近条件・行政的条件は変化がない。
つまり、これらは物理的状況と法律によるものであるから、公示地が地殻変動により移動するか法律が変わらない限り変わらない。
そうすると、この格差の変化は環境条件の変化しかないことになる。
さりとて、環境が変化したとも見えない。
少なくとも、1年間で格差が4%も拡大するとは思えない。
もし、仮に地価水準の格差が価格形成要因によって定性・定量的に決まるのなら、東京の1ヵ所の価格が決まれば全国津々浦々の価格が自動的に決まることになる。
しかし、実際には地域の事情により異なった動きとなっており、相対的価格差は刻々と変化している。
我々は、現在の地価水準は推定可能である。
しかし、要因があって価格が決まるという図式は前述のように成り立たないと思うのである。
わずか1年で外形上判別できない環境条件が4%変化するということは、価格形成要因があって価格が決まるのではなく、決定した価格ないし推定された価格相互の格差を説明するための道具であって、それ以上の意味はないのではないかと考えている。
我々は演繹的に推論しているのであって、帰納的に一般法則を導き出しているとはいえない。
なぜ角地加算は5%で4%ないし6%であってはいけないのか?
5%と判断した場合に4%ないし6%ではなく5%だという証明は、本人にもできない。
また、他の不動産鑑定士が5%ではないという立証もできない。
その結果、不動産鑑定士の数だけ判断があり、極論を言えば判定された正常価格は鑑定士の数だけ存在することになる。
より一層客観化する為には、それこそ「不動産鑑定士100人に聞きました」ということをしなければならないことになり、客観化の道は遠く険しい。
ある街の地価公示を例に取り異時点間の格差率の変化を見ると次のとおりである。
番 号 | H8 | H9 | H10 | H11 | H12 |
5-1 | 6,350 | 5,000 | 4,100 | 2,900 | 2,430 |
5-4 | 3,730 | 2,900 | 2,470 | 1,800 | 1,400 |
相対格差 | 100:59 | 100:58 | 100:60 | 100:62 | 100:58 |
ちなみに、5-1・5-4の地域の状況は、H8とH12を比較しても特に変化が見られない。
少なくとも、街路条件・交通接近条件・行政的条件は変化がない。
つまり、これらは物理的状況と法律によるものであるから、公示地が地殻変動により移動するか法律が変わらない限り変わらない。
そうすると、この格差の変化は環境条件の変化しかないことになる。
さりとて、環境が変化したとも見えない。
少なくとも、1年間で格差が4%も拡大するとは思えない。
もし、仮に地価水準の格差が価格形成要因によって定性・定量的に決まるのなら、東京の1ヵ所の価格が決まれば全国津々浦々の価格が自動的に決まることになる。
しかし、実際には地域の事情により異なった動きとなっており、相対的価格差は刻々と変化している。
我々は、現在の地価水準は推定可能である。
しかし、要因があって価格が決まるという図式は前述のように成り立たないと思うのである。
わずか1年で外形上判別できない環境条件が4%変化するということは、価格形成要因があって価格が決まるのではなく、決定した価格ないし推定された価格相互の格差を説明するための道具であって、それ以上の意味はないのではないかと考えている。
我々は演繹的に推論しているのであって、帰納的に一般法則を導き出しているとはいえない。
なぜ角地加算は5%で4%ないし6%であってはいけないのか?
5%と判断した場合に4%ないし6%ではなく5%だという証明は、本人にもできない。
また、他の不動産鑑定士が5%ではないという立証もできない。
その結果、不動産鑑定士の数だけ判断があり、極論を言えば判定された正常価格は鑑定士の数だけ存在することになる。
より一層客観化する為には、それこそ「不動産鑑定士100人に聞きました」ということをしなければならないことになり、客観化の道は遠く険しい。
取引事例比較法を考える Vol.1
2020.10.08
VOL.01 価格形成要因の価格決定に寄与する度合いは、すべて同じか?
不動産鑑定評価基準においては価格形成要因の定性的分析はなされているが、その要因が価格決定にどのように関与しているかについては記述がない。
各要因は全て同列に扱われており、どの要因が主要な役割をはたしているかについては触れていない。
通常の鑑定評価作業では各要因の寄与の度合いが解らないため、いずれも同じと推定して比準作業を行っている。
しかし、田舎と都会では接近条件の果たす役割は大きく異なっており、街路条件+10と接近条件+10とは同じ10%でも価格決定に対して寄与する度合いが異なるように思われる。
仮に、価格全体に対する寄与の度合いを街路条件が全体30%、交通接近条件が40%、環境条件その他30%とすれば、街路条件で+10%ということは+3%、接近条件で+10%ということは+4%ということになり、トータルでは+20%ではなく+7%ということになる。
消費者物価指数の算出においては、耐久消費財と食料品その他では物価に対する寄与の度合いが異なるとして、各品目毎にウェイトづけがなされている。
価格形成要因についても同じ事が言えるのではないかと考えているが、いまだに先が見えないでいる。
不動産鑑定評価基準においては価格形成要因の定性的分析はなされているが、その要因が価格決定にどのように関与しているかについては記述がない。
各要因は全て同列に扱われており、どの要因が主要な役割をはたしているかについては触れていない。
通常の鑑定評価作業では各要因の寄与の度合いが解らないため、いずれも同じと推定して比準作業を行っている。
しかし、田舎と都会では接近条件の果たす役割は大きく異なっており、街路条件+10と接近条件+10とは同じ10%でも価格決定に対して寄与する度合いが異なるように思われる。
仮に、価格全体に対する寄与の度合いを街路条件が全体30%、交通接近条件が40%、環境条件その他30%とすれば、街路条件で+10%ということは+3%、接近条件で+10%ということは+4%ということになり、トータルでは+20%ではなく+7%ということになる。
消費者物価指数の算出においては、耐久消費財と食料品その他では物価に対する寄与の度合いが異なるとして、各品目毎にウェイトづけがなされている。
価格形成要因についても同じ事が言えるのではないかと考えているが、いまだに先が見えないでいる。