サンタクロースがやって来た ~試される民主主義と地方自治~ Vol.3
2021.03.04
VOL.03 長期人口推計と日本経済の行方 

 人口問題研究所の長期人口推計に拠れば、2035年までに約1700万人(2005年比)の人口減少が予測されている。
 
 一人当たりの消費支出を年間 130万円とすると、約22兆円のGDPが消失することになる。
 合計特殊出生率は 1.3前後であるから、人口は確実に減る。
 
 2035年には、1805自治体のうち、人口5千人未満の自治体は5分の1以上になると予測されている。
 2030年から2035年にかけては約98%の自治体で人口が減少し、人口が20%以上減少する自治体は60%を超えるとされている。

 更に、生産年齢人口が40%以上減少する自治体は4割を超え、老年人口が50%以上増加する自治体はほぼ4分の1、老年人口の割合が40%を超える自治体は4割を超えるとされている。
 日本の将来を担う年少人口(14歳未満)の割合は10%未満となり、年少人口の割合が10%未満の自治体は約70%と著しく増加する。
 これを大雑把にいえば、国民の半分が税金で食べる人、半分が働いて税金を払う人ということになり、生産年齢人口一人が一人を扶養するということになる。
 はたしてそんなことが可能なのであろうか。

 もっと悲観的にいえば、実際に働けるのは18歳以上になるものと思われる他、公務員の人数を考慮するとおそらく国民4人で6人の国民を養うことになるのではないかと危惧される。

 つまり、日本経済はどう楽観的に考えても立ち行かないと結論づけるより他はない。

 戦前、大本営はどう考えても勝ち目のない戦争を始め、末期には誰もが戦争継続は無理と思うようになっているにもかかわらず、神国日本は不滅と強弁し、戦争に反対する者は非国民と非難し、それでも足りなくて特高警察を使って国民を追い回し、マスコミも大本営発表をタレ流し続け、国家指導部と一緒に国民を破滅の淵に追いやったのである。

 日本人は総認知症なのか、それとも忘れたフリをしているのか判らないが、敗戦に至るまでの全てのシステムを検証することなく一部の指導者と運の悪い幹部将校に責任を取らせてそれで良しとしたことを深く憂慮している。

 この点については大企業・国・自治体も同様で、問題が発生した時にシステムエラーと考えず、全て個人の責任に帰して終わらせている。

 その結果、最大犠牲点に到達するまでシステムが変更されることはない。

 最大犠牲点に到達すると、企業は破産・消滅し、国家は破綻する他はなく、同じ過ちを繰り返す。

 そう、歴史は繰り返すのである。

 我々はもっと歴史に学ばなくてはならない。
 歴史といっても、現在の歴史教育は単なる年表を暗記するだけで、さながらクイズの答えを覚えているだけで何の役にも立たない。

 歴史を学ぶとは、その時代の人間の生き方と社会のありようを学び、そこから現代の人間の生き方と社会のあり方を考えることであると思っている。
 個人的には、江戸時代以降、技術・道具は著しく進歩したが、その反面人間そのものの品格は著しく下落したと思っている。

2021.03.04 14:17 | 固定リンク | 鑑定雑感
サンタクロースがやって来た ~試される民主主義と地方自治~ Vol.2
2021.02.25
VOL.02 経済成長と拡大均衡の幻想 

 戦後経済の復興は目覚ましく、経済成長を支えるために財政規模は年々拡大してきた。
 経済成長はとどまることがないと信じていたので、いくら借金しても経済成長によって借金は必ず返せると思っていた。

 しかし、バブル崩壊後一転して経済は減速し、低成長時代に突入した。

 長期人口推計によっても分かるとおり、人口の現状維持はできない。

 一国の経済は、基本的に人口に依存している。
 人口が減少し、高齢化して労働人口も減る中で、経済成長が続くと予測するのは困難と思わざるを得ない。

 もっとも、そう考えるのは素人で、経済の専門家から見れば人口が半減しても今以上のGDPが確保される方法があるのかもしれない。

 もしそういう方法があるのであれば、国家再生の処方箋を是非書いて示してもらいたいと思うのは、筆者だけではあるまい。

 マスコミも、もう少し国・地方の財政状況の分析と対応についての息の長い、深い取材をして国民の前に明らかにして欲しいと願わざるを得ない。

 戦前の大本営発表のように、官製情報をタレ流し、国民を破滅への道へ追いやったことをマスコミは忘れないで欲しい。
 
 また、民主党も政権欲しさに国民に口当たりの良いことばかり言わないで、情報を開示して国民に財政難に対する覚悟と負担と責任の在り方を問うことを期待したい。


2021.02.25 14:16 | 固定リンク | 鑑定雑感
サンタクロースがやって来た ~試される民主主義と地方自治~ Vol.1
2021.02.18
VOL.01 マニフェスト選挙とサンタクロース

 鑑定雑感も今回で何回目になるのか、自分でも良く解らないでいる。(歳か?)

 これまでは主として鑑定ないし鑑定業界のことについて思いつくまま書いてきた。

 ある読者からは「もっと明るい話題はないの?」と聞かれたが、現在の自民党と同じく我が業界はあまりにもその世界は狭く、また世間の耳目を集めることも少ないので、内輪の話が主となるのはやむを得ず、内輪の話となると残念ながら明るい話題は少ない。

 そう自己弁護しているうちに、今回も編集長より原稿依頼の催促が来た。

 年4回の発行なのに、もう締切が来たのと文句を言っても始まらないが、今回は何を書いていいのかまとまっていない。(あァどうしよう)

 能力不足を露呈したが、とりあえず今日明日のメシを食べることを心配しているのが関の山で、短期ですら考えが及ばないのに中・長期に至っては闇のまた闇であり、原稿の締切なんぞとっくに忘れていた。(原稿料では食べていけない!!)


 話が逸れたが、今回は鑑定の世界の話題を見つけることができなかったので、地域経済の行方を憂慮する一人の田舎鑑定士の視点から、無謀にも民主主義と地方自治について考えてみることにした。

 ところで、今回はマニフェスト選挙が本格化しており、これまでの破られるためにしか存在しなかった選挙公約とは大違いであると期待している。
 このマニフェストを読むと、さながらサンタクロースのようである。
 トナカイならぬ選挙カー(自転車もあったか?)に乗って、老若男女のサンタクロースが全国を駆け回った。
 その結果、民主党の圧勝に終わったのは周知のとおりである。

 国民はサンタクロースのプレゼントに目が眩んだのか、それとも国民主権の意義に目覚めて一票を投じたのかは良く分からない。

 しかし、少なくとも自民党のサンタクロースより民主党のサンタクロースのプレゼントの方が良く見えたのは間違いない。
 なにせ国民の大半は中流以下で、これ以上の負担はできないというのが実感であろう。
 そういう意味では、民主党のプレゼントの中身の方が魅力的であったということになる。

 しかし、一国の経済を考えると、誰かが恩恵を受けるためには誰かがその負担をしなければならない。

 今回のマニフェストでは、恩恵を受ける人はハッキリしているが、負担する人は良く見えない。
 それは自民党のマニフェストも同様である。
 国・地方を合わせて 1,000兆円という借金をどうするのか。
 1,000兆円の平均利息を仮に2%として単純計算すると、年に20兆円の利息である。
 1日当たり約 556億円の利息である。
 1時間当たりでは、約23億円の利息となり、計算することさえ恐ろしい。
 それなのに、元金は減るどころか、年々増加している。

 他方、人口が減少する中で、少子高齢化は一段と進行しており、税の担い手は確実に減少している。

 このような現実を見ると、財政破綻は目前と考える他はない。

 プレゼントに喜んでいたら、後から請求書が山のように来てそのツケを払わされることになりかねない。
 国民は、タダほど高いものはないと知るべきである。
2021.02.18 14:14 | 固定リンク | 鑑定雑感

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