担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.5
2025.01.16
VOL.05 担保執行法改正と競売実務
前記でみたように、今回の改正によって競売実務が大きく変ったかといえばノーである。
実務的に見ると、大きく変ったのは執行裁判所内部の改革によるものである。
一つ目は、競売物件のインターネットによる全国周知である。
当初は東京をはじめとする主要都市から試行したが、今では全国に拡大されつつある。
このことによって全国どこからでも入札可能になったことのメリットは大きい。
二つ目は、競売評価様式の標準化である。
様式の標準化の作業には筆者も途中から加わったが、大変な作業であった。
それまでは、各執行裁判所や評価人によってバラバラであった様式や評価の考え方を標準化するとなると、これまでの経緯や考え方の相異がモロに出て、怒鳴り合いのバトルを何度繰り返したことか。
競売事務が行政事務の延長にあるとすれば、規則や通達で指示すればそれで済むと思ったが、競売事務は行政事務ではないらしく、最高裁判所は独自に決めることができないので評価人候補者が自主的(?)に集まって議論して決めてくれということであった。
良くぞ標準化ができたものだと、今更ながら感心するが、標準化がインターネットによる情報開示にどれ程寄与したかは論をまたない。
担保執行法改正をめぐる議論で指摘された、遅い・見にくい・売れないという問題・批判に対しては法改正の面ばかりではなく、執行裁判所・執行官・評価人候補者等の地道な努力や連携によって十分に改善されつつあると考える。
前記でみたように、今回の改正によって競売実務が大きく変ったかといえばノーである。
実務的に見ると、大きく変ったのは執行裁判所内部の改革によるものである。
一つ目は、競売物件のインターネットによる全国周知である。
当初は東京をはじめとする主要都市から試行したが、今では全国に拡大されつつある。
このことによって全国どこからでも入札可能になったことのメリットは大きい。
二つ目は、競売評価様式の標準化である。
様式の標準化の作業には筆者も途中から加わったが、大変な作業であった。
それまでは、各執行裁判所や評価人によってバラバラであった様式や評価の考え方を標準化するとなると、これまでの経緯や考え方の相異がモロに出て、怒鳴り合いのバトルを何度繰り返したことか。
競売事務が行政事務の延長にあるとすれば、規則や通達で指示すればそれで済むと思ったが、競売事務は行政事務ではないらしく、最高裁判所は独自に決めることができないので評価人候補者が自主的(?)に集まって議論して決めてくれということであった。
良くぞ標準化ができたものだと、今更ながら感心するが、標準化がインターネットによる情報開示にどれ程寄与したかは論をまたない。
担保執行法改正をめぐる議論で指摘された、遅い・見にくい・売れないという問題・批判に対しては法改正の面ばかりではなく、執行裁判所・執行官・評価人候補者等の地道な努力や連携によって十分に改善されつつあると考える。
担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.4
2025.01.09
VOL.04 最低売却価額制度の廃止と売却基準価額
最低売却価額制度は、平成17年3月末に廃止され、4月からは売却基準価額となった。
最低売却価額廃止の理由は、前二者と同じく売却率が低いのは最低売却価額が競売市場とミスマッチをおこし、これが障害となって結果的に売却が進まないというものであった。
売却物件は所有者の意思に反して売却する為、一般の物件に比較して売りにくいのは当然である。
また、売却単位が一般の市場ではあり得ない組合せとなっているものもある。
いずれにしても、最低売却価額制度をめぐる議論は物件が売却しやすいように整理されてから市場に出される一般物件と、そうではない競売物件をゴチャ混ぜにしていたと思われる。
最低売却価額が廃止され売却基準価額となって早一年が過ぎたが、この間に競売市場がコペルニクス的に大回転したかと言えば、特に大きく変った点は見られない。
少なくとも、個人的にはそう感じている。
ところで、売却基準価額は最低売却価額ではないので、この価額を2割下回る価額(買受可能価額という)でも入札は可能である。
それでは全国的にみて、売却基準価額を下回る価額で落札されたケースはどの位あるのであろうか。
確実な統計データはないが、関係者の話を総合すると概ね5%前後であるようである。
仮に売却基準価額ではなかったとしたら、売却率は5%前後低下し、売却期間も再入札・再評価の時間だけ長期化したことになる。
言葉を換えれば、この改正によって売却率は5%程度改善し、売却期間も数ヶ月は短縮されたと評価することも可能である。
しかしながら、法改正に費やされたエネルギーとの比較で考えると、改正のための改正と思われても仕方がない。
最低売却価額制度は、平成17年3月末に廃止され、4月からは売却基準価額となった。
最低売却価額廃止の理由は、前二者と同じく売却率が低いのは最低売却価額が競売市場とミスマッチをおこし、これが障害となって結果的に売却が進まないというものであった。
売却物件は所有者の意思に反して売却する為、一般の物件に比較して売りにくいのは当然である。
また、売却単位が一般の市場ではあり得ない組合せとなっているものもある。
いずれにしても、最低売却価額制度をめぐる議論は物件が売却しやすいように整理されてから市場に出される一般物件と、そうではない競売物件をゴチャ混ぜにしていたと思われる。
最低売却価額が廃止され売却基準価額となって早一年が過ぎたが、この間に競売市場がコペルニクス的に大回転したかと言えば、特に大きく変った点は見られない。
少なくとも、個人的にはそう感じている。
ところで、売却基準価額は最低売却価額ではないので、この価額を2割下回る価額(買受可能価額という)でも入札は可能である。
それでは全国的にみて、売却基準価額を下回る価額で落札されたケースはどの位あるのであろうか。
確実な統計データはないが、関係者の話を総合すると概ね5%前後であるようである。
仮に売却基準価額ではなかったとしたら、売却率は5%前後低下し、売却期間も再入札・再評価の時間だけ長期化したことになる。
言葉を換えれば、この改正によって売却率は5%程度改善し、売却期間も数ヶ月は短縮されたと評価することも可能である。
しかしながら、法改正に費やされたエネルギーとの比較で考えると、改正のための改正と思われても仕方がない。
担保執行法制の改正と競売の今後の動向 ~ Vol.3
2024.12.19
VOL.03 競売物件の内覧について
競売物件が売れないのは、物件の中を見れないからという理由が大勢を占め、平成16年4月から競売物件の内覧が実施された。
しかしながら、競売物件の中が見られないから売れないという論理は、実は何の根拠もなかったということが昨今の売却率が証明している。
法改正前の平成14年以降の競売物件の売却率は既に都市部で80%を超えており、昨今は90%を越えているところもある。
全国平均でも60%を超え、70%になろうとしている。
このような中で内覧が実施されたが、内覧実施件数は全国的にみても極めて少ない。
競売申立件数の割合からすると、無いに等しい状況にある。
これらの状況をみると、競売物件が売れなかったのは内覧できるかどうかとは無関係だったことが解る。
内覧は債権者の申立てによりなされるが、債務者・所有者・賃借人等のプライバシー保護の問題や、内覧希望者が多数いる場合の対応等の問題からその要件は厳しく、その為に実施件数が少なかったのではという見方もあるが、実態は売却率が高いので債権者が内覧の必要性を感じておらず、そのため内覧の申立てをしなかったということに尽きるものと思われる。
内覧実施の為に万全の体制を準備していた執行裁判所・執行官にすれば、肩すかしもいいところである。
例外的なごく少数の内覧希望者の為に、多大の時間と費用をかけ改正したが、大山鳴動ネズミ一匹の結果となった。
競売物件が売れないのは、物件の中を見れないからという理由が大勢を占め、平成16年4月から競売物件の内覧が実施された。
しかしながら、競売物件の中が見られないから売れないという論理は、実は何の根拠もなかったということが昨今の売却率が証明している。
法改正前の平成14年以降の競売物件の売却率は既に都市部で80%を超えており、昨今は90%を越えているところもある。
全国平均でも60%を超え、70%になろうとしている。
このような中で内覧が実施されたが、内覧実施件数は全国的にみても極めて少ない。
競売申立件数の割合からすると、無いに等しい状況にある。
これらの状況をみると、競売物件が売れなかったのは内覧できるかどうかとは無関係だったことが解る。
内覧は債権者の申立てによりなされるが、債務者・所有者・賃借人等のプライバシー保護の問題や、内覧希望者が多数いる場合の対応等の問題からその要件は厳しく、その為に実施件数が少なかったのではという見方もあるが、実態は売却率が高いので債権者が内覧の必要性を感じておらず、そのため内覧の申立てをしなかったということに尽きるものと思われる。
内覧実施の為に万全の体制を準備していた執行裁判所・執行官にすれば、肩すかしもいいところである。
例外的なごく少数の内覧希望者の為に、多大の時間と費用をかけ改正したが、大山鳴動ネズミ一匹の結果となった。