パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.3
2023.03.09
VOL.03 インフラは本当に足りないのか
 北海道における主要なインフラをみると、次のとおりである。

 交通インフラ(空港・港湾・高速道路・鉄道)・通信インフラ・ライフラインインフラ・教育インフラ(小・中・高・大学・専門学校等)・高度医療インフラ・電力インフラ(水力・原子力)・農業インフラ等。

 これらの高度インフラが全て装備されている国で、発展途上国はない。

 つまり、北海道のインフラ装備率は質・量ともに先進国並みである。

 2005年版の北海道経済要覧によれば、世界の主要国における北海道の位置づけは、次のとおりである。

■OECD諸国の国民所得の比較(14年)


 これをみると、各国GDPでは世界第21位に、1人当りの国民所得では世界第14位にランクされる。

 国民所得は、なんとドイツ・フランス・カナダ・イタリア・オーストリア・スペインより上である。

 GDPは、人口にもよるからいたしかたないとしても、1人当り国民所得がG7を構成するドイツ・フランス・カナダ・イタリアより上なのである。

 先にみたように、インフラの質・量は主要先進国並みにあり、1人当りの国民所得はG7の構成国中堂々の第4位、面積はオーストリアとほぼ同じ、人口はデンマークより上である。

 世界主要国の中でもほぼ上位に位置している北海道が、公共事業や農業補助に依存しなければ経済的にやっていけない合理的理由は見当らない。

 将来人口を考えれば、インフラは余っても足りないことはない。

 世界主要国における北海道の位置づけをみても分かるように、本当に足りないのはインフラではなく、十分すぎる程所有しているインフラの効率的な使い方やチエである。

 これだけのインフラがあって自立できないのは、親の金をアテにするパラサイト体質とチエの欠如である。

 公共事業は金を手にする手取早い方法であるが、国の金をアテにして何かしようとするのは、親の金をアテにして家を出て行かない子供と同じで、真に子供や地域のためにはならないと考える。
2023.03.09 09:15 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.2
2023.03.02
VOL.01 自立できない事情

 
 北海道経済をみると、完全な中央依存体質となっている。

 歴史的な背景もあると思われるが、明治以降約140年を経て、パラサイト体質は極めて強くなっている。

 遺伝的になったと言っては言い過ぎであろうか。


 このような体質の源は、明治政府の開拓政策にあったのではないかと思われる。


 未開地であった北海道は、これといった産業がなかったため、一次産業を主とせざるを得なかった。

 そして、一次産業の基盤整備の費用は、資本の集積もない未開地であったから、必然的に中央に依存せざるを得ないことになる。

 経済の勃興期には、北海道のみならず発展途上国以外の国々に経済援助を行なうことはやむを得ないことである。

 自立できない間の経済援助は当然と考えるが、問題は援助の仕方である。



 日本の対外経済援助であるODAの評判は、必ずしも高くない。

 世界で一、二位を争う経済援助を行なっていながら、何故かくも外国の評判が悪いのであろうか。

 ODAは、拝金主義者の集りで、金さえあれば何でも買えると思っているのであろうか。

 北海道が自立意識を持てなかったのは、ODAと同じような問題をはらんでいるからと思われる。

 つまり、ODAの評判が悪いのは、資本の移転と技術の移転がないか、もしくは十分ではなかったことに起因しているものと考えられる。

 いくら経済援助を行なっても、資本の移転と技術の移転がなければ、発展途上国は何時まで経っても発展途上国のままである。

 経済的に自立するためには、資本の蓄積と技術の移転は必要条件である。

 資本の蓄積や技術がなければ、一国の産業を興すことはできない。

 日本型の援助は、結局のところ援助額の大半が日本に還流するため、相手方にパラサイト意識を醸成させるだけであったと思われる。

 日本はお金によって相手国を思うようにできると思っているが、相手方は援助に名を借りた海外における公共事業としか思っていない。

 つまり、日本のための援助だからいくらお金を使ってもあまり感謝されないことになる。



 このようなお金の使い方が、北海道にもあてはまるのではないかと思われる。

 一例を挙げると、ある地方空港のジェット化の工事である。

 空港整備事業のような技術度の高い工事は、道内や地元の企業は、資金も技術もないため受注したくてもできない。

 受注できるのは本州のスーパーゼネコンであり、工事金額の約3割は本社経費として東京に還流される。

 設備機器や機材の多くは本州で生産されたものであるから、これらの費用も本州資本に還流される。

 地元に落ちるのは、せいぜい骨材の一部(砂利・生コン)と日雇い労務者、ダンプ業者等で、工事金額のせいぜい2~3割と思われる。

 これ以外に地元に間違いなく落ちるのは、糞・小便とゴミである。

 これだけは東京に還流することはない。

 冗談が過ぎたが、北海道における大型の公共事業は、その全てがスーパーゼネコンの手によるものと言っても過言ではないものと思われる。

 したがって、公共事業をいくらつぎ込んでも、資本の蓄積や技術の移転が進まない。

 そのため、地元企業はなかなか育たず、地元に就職できない若者は都会に出ざるを得なくなる。


 これが戦後も延々と続いているのである。


 東京に予算陳上して得た公共事業予算は、結局東京に還流され、北海道には資本の蓄積や技術の集積が進まないことになる。

 市町村は地元に十分な資本力を有する企業や技術を有する企業が育たないため、本州大手企業に発注し、その下請けとして地元企業を使ってもらう他はないことになる。

 その結果、地元に資本の移転や技術の移転が進まず市町村にも地元企業にも自立意識が育たないことになる。

 
 北海道は永遠の発展途上国もどきのままである。

 本当の発展途上国なら、海外から経済援助を呼び込むことが可能であるが、残念ながらそれは期待できない。

 スポンサーである中央政府は、お金が無いからこれからは経済援助はありません、自立して下さいと言ってはいるが、遺伝的体質となったパラサイト意識を捨てるのは容易なことではない。
2023.03.02 09:15 | 固定リンク | 鑑定雑感
パラサイト北海道「アジアの中の北海道」 ~ Vol.1
2023.02.22
VOL.01 自立への道

 これまで述べてきたように、統計データだけを眺めていると、そこから見えてくるのはつらくて暗い困難な道だけである。

 国も地方も、なんとかなると思って拡大均衡政策を続けてきたが、その結果国・地方合せて1000兆円にもなるという借金が残っただけである。

 少子高齢化が本格化する中で、一体どのようにしたら借金を返せるというのだろうか。

 道州制議論は終盤をむかえているが、北海道知事は北海道特例の廃止は納得できないとして、道州制には全面的には納得していない。

 個人的な見解ではあるが、北海道特例があっても無くても、最早なんの意味もないと思っている。

 つまり、北海道特例の中心は公共事業の補助率のカサ上げと思われるが、ある町では地元負担の100万円さえ用意できなくて補助事業を返上しているのである。

 補助事業を100%消化できる体力がある市町村は、一体どの位あるというのであろうか。

 一極集中、多極過疎が進行する中で、補助率をカサ上げしてもらったからといってどれ程の事業が実施できるかは疑問である。

 いくら補助してもらっても、100%補助ではないのである。

 地元負担分は、借金として積増しされ、財政硬直化はなお一層深刻化するだけである。

 人口半減時代をむかえようとしているのに、これ以上のインフラが本当に必要なのであろうか。

 都会の住民からみれば、10LDKの家で一人暮らしをしながら、仕事がないので増築してくれと言っているようなものである。

 増築した後の部屋の使い道はなく、維持管理に要する費用の補助もないのである。
2023.02.22 09:05 | 固定リンク | 鑑定雑感

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