鑑定業界と相互不信社会 Vol.5
2020.06.18
VOL.05 取引事例収集の呪縛と相互信頼
取引事例の収集は、何故地価公示でなければできないのであろうか。
我々は普段でも随時資料収集を行なっている。
しかし、個別に収集した事例は協会には提供していない。
新スキーム以前は、年2回の事例収集だけである。
新スキームにより、事例の収集は通年体制になるが、事例収集は受身である。
本来なら鑑定評価に必要な資料は地価公示・地価調査に限らず、地代・家賃等の事例も含めて独自に、広範に収集するという気概が必要ではなかったのか。
事例収集は地価公示等に付随するものと思考停止し、本来必須であるべき資料の収集体制について根本的に検討してこなかったことについては、反省すべきである。
もう忘れてしまったが、5年位前までは協会の推薦がなければ評価員になれなかった時代が続いた。
そのため、協会の方針どおり行動することが是とされ、評価員の収集した事例は当然の如く協会に集められ、それに異議を唱える者は少なかった。
また、事例収集は地価公示だけが頼りで、事例収集を組織的にどうするか等の話は聞いたことがないが、それでも支障がなかったのは会員間の情報交換が十分であったからである。
カード化されない情報でも、相互に交換できたのは相互に気心が知れており、相互信頼が十分に機能していたため、情報管理に気を遣う必要がなかったからでもある。
しかし、その時代も終わりを告げようとしている。
取引事例の収集は、何故地価公示でなければできないのであろうか。
我々は普段でも随時資料収集を行なっている。
しかし、個別に収集した事例は協会には提供していない。
新スキーム以前は、年2回の事例収集だけである。
新スキームにより、事例の収集は通年体制になるが、事例収集は受身である。
本来なら鑑定評価に必要な資料は地価公示・地価調査に限らず、地代・家賃等の事例も含めて独自に、広範に収集するという気概が必要ではなかったのか。
事例収集は地価公示等に付随するものと思考停止し、本来必須であるべき資料の収集体制について根本的に検討してこなかったことについては、反省すべきである。
もう忘れてしまったが、5年位前までは協会の推薦がなければ評価員になれなかった時代が続いた。
そのため、協会の方針どおり行動することが是とされ、評価員の収集した事例は当然の如く協会に集められ、それに異議を唱える者は少なかった。
また、事例収集は地価公示だけが頼りで、事例収集を組織的にどうするか等の話は聞いたことがないが、それでも支障がなかったのは会員間の情報交換が十分であったからである。
カード化されない情報でも、相互に交換できたのは相互に気心が知れており、相互信頼が十分に機能していたため、情報管理に気を遣う必要がなかったからでもある。
しかし、その時代も終わりを告げようとしている。
鑑定業界と相互不信社会 Vol.4
2020.06.11
VOL.04 地価公示と情報収集
前述したように、地価公示をもってしても地方市町村に対して異動通知の閲覧を当然の如く要求はできない。
地価調査では尚更のことである。
これまで固定資産税評価や上級官庁の要請等からシブシブ閲覧要求に応じてきたものの、真正面から異動通知閲覧の合法性を問われると、法律上の明確な根拠を示すことができないため、有効な反論ができない。
本来的には個人情報保護法制定時に我が業界も鑑定業法や公的評価に関連して法改正等の行動をすべきであったと思われるが、時既に遅しである。
ところが、ここにきて不動産取引市場の透明化を図るため、取引情報の公開(今のところ不完全であるが)が閣議決定され、その中で地価公示の枠組みを使って情報収集を行うこととされた。
一部の不動産鑑定士にとっては、極めて都合の良い方法であったとみえて、協会本部は総力を挙げてこれに取組むこととされ、大都市から試行されたが平成19年には全国に拡大されることとなった。
新スキームと称するこの方法に、ことさらに異議を唱える心算はないが、拙速ではなかったかと思わざるを得ない。
以下疑問点を思いつくままに上げてみる。
イ.地価公示の枠組みを使うなら、何故法務省は登記情報を出せるのか。~地価公示法には規定がない
ロ.取引情報は国が回収し、回収された情報を<・・・・・・・>地価公示評価員のみが(傍点筆者)整理の義務を負わされているが、評価員として委嘱されていない期間がある。
ハ.標準地の鑑定評価の基準に関する省令では、標準地の鑑定評価に関係しない資料等(中古マンション・農地・純山林等)の収集は特に必要とされていない。
ニ.標準地の鑑定評価にあたって収集した資料の最終的な帰属先が明確ではない。
ホ.協会が評価員に対して資料の提出を命じる法的根拠が明確ではない。
ヘ.新スキームにより収集した資料を協会が集約し、それを会員のみが独占的・排他的に閲覧利用できるという法的根拠はない。
したがって、他の公益法人や大学・独立行政法人等から研究目的等で資料請求があった時に謝絶できるかどうかは解らない。
ト.地価公示に関係のない資料も沢山整理させられるが、資料収集のための負担と受益の関係が整理されていない。
等々である。
公的評価等にとって、不動産鑑定士はなくてはならない存在となった訳であるから、我が業界はもっと根本的に考え、社会にとってより有用な(不動産鑑定士だけのためではない)、そしてより的確な情報提供を担えるよう、関連する制度や法律の整備を広く社会に訴える必要性があるのではなかろうか。
前述したように、地価公示をもってしても地方市町村に対して異動通知の閲覧を当然の如く要求はできない。
地価調査では尚更のことである。
これまで固定資産税評価や上級官庁の要請等からシブシブ閲覧要求に応じてきたものの、真正面から異動通知閲覧の合法性を問われると、法律上の明確な根拠を示すことができないため、有効な反論ができない。
本来的には個人情報保護法制定時に我が業界も鑑定業法や公的評価に関連して法改正等の行動をすべきであったと思われるが、時既に遅しである。
ところが、ここにきて不動産取引市場の透明化を図るため、取引情報の公開(今のところ不完全であるが)が閣議決定され、その中で地価公示の枠組みを使って情報収集を行うこととされた。
一部の不動産鑑定士にとっては、極めて都合の良い方法であったとみえて、協会本部は総力を挙げてこれに取組むこととされ、大都市から試行されたが平成19年には全国に拡大されることとなった。
新スキームと称するこの方法に、ことさらに異議を唱える心算はないが、拙速ではなかったかと思わざるを得ない。
以下疑問点を思いつくままに上げてみる。
イ.地価公示の枠組みを使うなら、何故法務省は登記情報を出せるのか。~地価公示法には規定がない
ロ.取引情報は国が回収し、回収された情報を<・・・・・・・>地価公示評価員のみが(傍点筆者)整理の義務を負わされているが、評価員として委嘱されていない期間がある。
ハ.標準地の鑑定評価の基準に関する省令では、標準地の鑑定評価に関係しない資料等(中古マンション・農地・純山林等)の収集は特に必要とされていない。
ニ.標準地の鑑定評価にあたって収集した資料の最終的な帰属先が明確ではない。
ホ.協会が評価員に対して資料の提出を命じる法的根拠が明確ではない。
ヘ.新スキームにより収集した資料を協会が集約し、それを会員のみが独占的・排他的に閲覧利用できるという法的根拠はない。
したがって、他の公益法人や大学・独立行政法人等から研究目的等で資料請求があった時に謝絶できるかどうかは解らない。
ト.地価公示に関係のない資料も沢山整理させられるが、資料収集のための負担と受益の関係が整理されていない。
等々である。
公的評価等にとって、不動産鑑定士はなくてはならない存在となった訳であるから、我が業界はもっと根本的に考え、社会にとってより有用な(不動産鑑定士だけのためではない)、そしてより的確な情報提供を担えるよう、関連する制度や法律の整備を広く社会に訴える必要性があるのではなかろうか。
鑑定業界と相互不信社会 Vol.3
2020.06.04
VOL.03 個人情報保護法と相互信頼
不動産鑑定士という職業の認知度は、以前よりは格段に上がったが、その反面業務を取巻く環境は厳しくなった。
公的評価に関して特に調査権のない不動産鑑定士にとって、情報収集はこれまで以上に気を遣う業務となった。
これまでは、情報の収集と管理は地価公示評価員を中心とする、所謂仲間内の相互信頼の中で行なわれてきた。
しかしながら、地価公示評価員は会員総数の半分にも満たず、更に地価調査にいたっては、地元の会員以外は担当することがない現状にあっては、会員相互の信頼は夢のまた夢となりつつある。
時代の流れとあらばしかたないとあきらめるしかないと思うが、個人情報保護法によって我が業界はあらためて鑑定業並びに公的評価における社会的役割とそのあり方等について根本的に考え直さなければならない時が来たと思わざるを得ない。
個人情報保護法が施行された現在、個人情報の闇雲な保護を口実に大半の個人情報が入手できない状況になっている。
本来、同法は公益性と私的利用のバランスを目指したものと理解していたが、末端の役所や個人レベルでは、とにかく個人情報であれば何でもかんでも開示できないという風潮が一般化しつつある。
このような社会の流れに対して、我が業界は公的評価の公益性から不動産鑑定士の果すべき役割と、それに伴って必要となる個人情報の収集・調査等に関して広く社会に対し何の提言もしていないのは、実に嘆かわしいことである。
不動産鑑定士という職業の認知度は、以前よりは格段に上がったが、その反面業務を取巻く環境は厳しくなった。
公的評価に関して特に調査権のない不動産鑑定士にとって、情報収集はこれまで以上に気を遣う業務となった。
これまでは、情報の収集と管理は地価公示評価員を中心とする、所謂仲間内の相互信頼の中で行なわれてきた。
しかしながら、地価公示評価員は会員総数の半分にも満たず、更に地価調査にいたっては、地元の会員以外は担当することがない現状にあっては、会員相互の信頼は夢のまた夢となりつつある。
時代の流れとあらばしかたないとあきらめるしかないと思うが、個人情報保護法によって我が業界はあらためて鑑定業並びに公的評価における社会的役割とそのあり方等について根本的に考え直さなければならない時が来たと思わざるを得ない。
個人情報保護法が施行された現在、個人情報の闇雲な保護を口実に大半の個人情報が入手できない状況になっている。
本来、同法は公益性と私的利用のバランスを目指したものと理解していたが、末端の役所や個人レベルでは、とにかく個人情報であれば何でもかんでも開示できないという風潮が一般化しつつある。
このような社会の流れに対して、我が業界は公的評価の公益性から不動産鑑定士の果すべき役割と、それに伴って必要となる個人情報の収集・調査等に関して広く社会に対し何の提言もしていないのは、実に嘆かわしいことである。